株式会社本牧通り動物病院

これを知っていれば絆が深まる!行動科獣医師が教える、犬猫のストレスサイン

こんにちは。犬や猫のストレスサインをご存じでしょうか?犬や猫と暮らしていると、何気ない仕草を目にすることがありますよね。

「いつもの仕草」だと思っていた行動が、実は「ちょっと困っているよ」のサインかもしれません。

例えば、

「うちの子、最近よくあくびをするけど眠いのかな?」

「病院で急にペロペロと鼻を舐めるけど、緊張している?」

「猫が急に毛づくろいを始めたけど、きれい好きだから?」

でも、犬や猫の行動の中には、緊張や不安、ストレスを感じているときに見られるサインがあります。

今回は、飼い主さんが見逃しやすい犬・猫のストレスサインと、「そんなとき飼い主はどうしたらいいの?」を行動学の視点からご紹介します。

① 「あくび」「鼻をペロッ」は眠い・お腹が空いたとは限らない!

犬や猫があくびをしていると、

「眠いのかな?」

と思いますよね。もちろん、本当に眠くてあくびをしていることもあります。

でも、例えば動物病院で診察をしているとき、知らない人に近づかれたとき、慣れない場所にいるときなどに、何度もあくびをする場合は、緊張やストレスを感じている可能性があります。

犬では、鼻や口の周りをペロッと舐める仕草も、緊張しているときに見られることがあります。

例えば、人前で発表するときに緊張して「なんだか口が乾く……」という経験はありませんか?犬の場合は、そうした緊張が「ペロッ」という行動として表れることがあります。

ただし、ここで大切なのは、あくびや鼻を舐める=必ずストレスというわけではないということ。

眠気や口の中の違和感など、ほかの理由もあります。「その行動が、いつ・どんな状況で起きているのか」を一緒に見ることがポイントです。

② 「顔をそらす」「逃げる」は、わがままではありません

犬や猫に、「かわいいね~!」と顔を近づけたら、スッと顔を背けられた。

抱っこしようとしたら、逃げられた。など…そんな経験はありませんか?

「せっかく可愛がっているのに……」と思ってしまいますよね。

でも、これは「ちょっと距離をとりたい」というサインかもしれません。

例えば、知らない人が自分の顔のすぐ近くまで近づいてきたら、私たちも少し後ろに下がりたくなりますよね。犬や猫にとっても同じです。

顔を背ける、体をそらす、離れる、隠れるなどの行動は、

「今はちょっとやめてほしいな」

という意思表示なのかもしれません。

ここで「逃げるから追いかける」「抱っこして捕まえる」を繰り返してしまうと、「逃げても追いかけてくる」という経験を積んでしまいます。

まずは、その子が距離をとれるようにしてあげること。「嫌だ」と言えることも、安心して暮らすためには大切なのです。

③ 「急に毛づくろい」「体をかく」もストレスのサイン?

猫が突然ペロペロと毛づくろいを始める。

犬が急に体をブルブルッと振る。

そのほかにも、体をかく、床の匂いを嗅ぐ、急に別の行動を始めるなど、一見すると「何でもない行動」に見えるものがあります。

これらが状況によっては、緊張したときに気持ちを落ち着かせるための行動として現れることがあります。

例えば、私たちも緊張すると、

「意味もなくスマホを触る」

「髪を触る」

「机の上を片付け始める」

など、ついやってしまう行動がありますよね。犬や猫にも、それに似たところがあります。ただし、ここも注意が必要です。

特に猫の過剰な毛づくろいや犬の体を頻繁に舐める行動は、皮膚病や痛みなど身体的な問題が原因の場合もあります。

「ストレスだろう」と決めつけず、頻度や場所、皮膚の状態なども確認しましょう。

④ 「唸る・シャー!」は、怒っているだけじゃない

犬が「ウーッ」と唸る。

猫が「シャーッ!」と威嚇する。

これは飼い主さんにとって、とても分かりやすい「怒っているサイン」ですよね。

でも、実はその前に、もっと小さなサインが出ていることがあります。

例えば、

「近づかないでほしい」

顔をそらす

体を硬くする

逃げる

唸る・シャー!

それでも近づかれる

噛む

というように、少しずつ反応が強くなっていくことがあります。

つまり、唸りや威嚇は突然現れた「攻撃」ではなく、「これ以上は近づかないで」という最後の警告になっていることもあります。

「唸ったから叱る」のではなく、「その子が唸るほど嫌だったものは何だったのか?」を考えることが重要です。

唸るというサインを出せるうちに距離をとってあげることで、噛むなどのより強い行動を防げる場合があります。

⑤ ストレスサインを見つけたら、飼い主はどうすればいい?

では、愛犬・愛猫にストレスサインを見つけたら、どうすればいいのでしょうか?

一番大切なのは、「その行動をやめさせる」よりも「なぜストレスを感じているのか」を考えることです。

例えば、

・ 苦手な人が近づいている?

・ 他の犬や猫との距離が近すぎる?

・大きな音がしている?

・抱っこや爪切りが嫌なのかも?

・病院など慣れない場所にいる?

・休める場所がない?

・生活環境に変化があった?

などです。

そして可能であれば、その刺激から少し距離をとってあげましょう。

例えば、他の犬が苦手なら無理に挨拶させる必要はありません。病院が怖いなら、いきなり診察台に乗せるのではなく、まずは病院という場所に慣れるところから始める方法もあります。

これは「甘やかし」ではありません。「怖いものから逃げられる」という安心感があるからこそ、少しずつ新しい経験に挑戦できることもあるのです。

「いつもの行動」と「ストレスサイン」を見分けるには?

ここまで読んで、

「じゃあ、あくびをしたらストレスなの?」

「毛づくろいしたら病院に行くべき?」

と思った方もいるかもしれません。実は、ひとつの行動だけを見て「ストレス」と判断することはできません。

大切なのは、

「いつもと違うか?」

「どんな場面で起きているか?」

「ほかにどんな行動が一緒に出ているか?」

を見ることです。

例えば、家でリラックスしているときにあくびをするのは普通でしょう。

でも、病院で体を硬くし、顔をそらしながら何度もあくびをしているなら、「緊張しているのかも?」と考える材料になります。

犬や猫の行動は、1つの単語ではなく、「文章」のように前後の流れを含めて読むと分かりやすくなります。

「困った行動」になる前に、サインに気づこう

犬や猫がストレスを感じることを、完全になくすことはできません。

大切なのは、ストレスを感じたときに「この子は今、ちょっと困っているんだな」と気づいてあげることです。

前述のとおり、小さなサインを見逃していると、

「顔をそらす」

「逃げる」

「唸る」

「吠える・威嚇する」

「噛む」

と、どんどん行動が強くなってしまうこともあります。

逆に言えば、早い段階で気づくことができれば、その子が「もう無理!」となる前に助けてあげられるかもしれません。

「最近、うちの子が何となく落ち着かない」

「以前より触られるのを嫌がる」

「病院や散歩での恐怖・嫌悪反応が強くなった」

そんな変化があれば、まずはその様子を動画で撮影しておくのもおすすめです。そして、「これってストレスなのかな?」と判断に迷ったときは、獣医師に相談してみましょう。

特に、急に行動が変化した場合や、攻撃行動、過剰な毛づくろい、食欲や排泄の変化などを伴う場合には、身体的な病気が隠れていないか確認することも大切です。

獣医行動診療科では、問題行動そのものだけではなく、「その子がなぜその行動をしているのか」を一緒に考えていきます。

「まだ問題行動とは言えないかな?」という小さな変化でも大丈夫です。愛犬・愛猫の「ちょっと困っているよ」というサインに、早めに気づいてあげること。

それが、問題行動の予防や、動物と飼い主さんがより快適に暮らすための第一歩になるかもしれません。

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