こんにちは。
「うちの犬、家ではいい子なのに、知らない人が来ると吠えるんです」
「猫がトイレ以外でおしっこするようになってしまって……」
「子犬がうんちを食べてしまいます!」
愛犬・愛猫と暮らしていると、こんな「困った行動」に悩むことがありますよね。でも、これらの行動は、単なる「しつけ不足」や「わがまま」とは限りません。動物の行動には、その子なりの理由があります。
今回は、獣医行動診療科でよく相談される「困った行動」を5つご紹介します。
「これ、うちの子にも当てはまる!」というものがないか、ぜひチェックしてみてください。
① 噛む・唸る・威嚇する「攻撃行動」
犬や猫の行動相談の中でも、飼い主さんが特に困るのが「噛む」という行動です。
「子犬だから甘噛みは仕方ないですよね?」
「猫を撫でていたら、突然ガブッと噛まれました!」
「散歩中、他の犬を見ると唸って飛びかかろうとします」
こんな経験はありませんか?
実は「噛む」という同じ行動でも、その理由はさまざまです。
例えば、
・ 怖いから噛む
・触られたくないから噛む
・遊びの延長で噛む
・興奮して噛む
・食べ物やおもちゃを守って噛む
・他の動物を遠ざけるために噛む
・痛みや病気があって触られるのを嫌がる
などがあります。
例えば、怖い犬にとって「知らない人が近づいてくる」という状況は、私たちが苦手な人からどんどん距離を詰められているようなものかもしれません。
「噛んじゃダメ!」と叱るだけでは、「怖い」という気持ちそのものはなくなりません。
むしろ、恐怖や不安が強くなってしまうこともあります。
「なぜ噛んでいるのか?」を考えることが、攻撃行動への第一歩です。
また、これまで噛まなかった子が突然怒るようになった場合には、痛みなどの身体的な原因が隠れていることもあります。
② トイレの失敗・マーキングなどの「排泄の問題」
「今までトイレでできていたのに、急に失敗するようになった」
「猫が布団やソファでおしっこをするようになった」
「何度掃除しても同じ場所でしてしまう……」
これも、とても困る行動のひとつです。
特に猫の場合、
「私への嫌がらせ?」
「怒って仕返ししているの?」
と思ってしまう飼い主さんもいます。
でも、猫は人間のように「飼い主さんを困らせてやろう」と考えて粗相をしているとは限りません。
例えば、布団は猫にとって、
「ふかふかで、吸水性があって、飼い主さんの匂いがして安心できる場所」
なのかもしれません。
また、トイレの場所や砂の種類、トイレの大きさ、同居猫との関係など、環境が原因になっていることもあります。
そして忘れてはいけないのが、病気の可能性です。
膀胱炎や尿路疾患などが原因で、トイレ以外で排泄することもあります。そのため、排泄の問題は「しつけ」の問題と決めつけず、まず身体的な原因がないか確認することも大切です。
③ 吠える・鳴く「声の問題」
「インターホンが鳴ると大騒ぎ!」
「散歩中に他の犬を見るとワンワン!」
「家の前を人が通るだけで吠える!」
犬の飼い主さんなら、一度は悩んだことがあるかもしれません。「お願いだから静かにして~!」と思ってしまいますよね。
でも、犬にとって吠えることは、私たちにとっての言葉のようなものです。
「誰か来た!」
「怖い!」
「こっちに来ないで!」
「遊びたい!」
「おやつがほしい!」
など、さまざまな意味があります。
例えば、インターホンが鳴ったときに吠える犬。
「インターホン=吠える」という単純な反応に見えても、
インターホンが鳴る → 誰かが家に入ってくる → 怖い
という子もいれば、
インターホンが鳴る → 家族が慌ただしく動く → 自分も興奮する
という子もいます。
つまり、同じ「吠える」でも原因が違えば、対応方法も変わります。「吠えたら叱る」だけではなく、何に反応しているのかを見極めることが大切なのです。
④ 食糞・拾い食いなどの「食行動の問題」
「子犬がうんちを食べちゃうんです!」
これは、飼い主さんにとってかなりショックな問題ですよね。
「栄養が足りないんでしょうか?」
「お腹が空いているの?」
「怒ったほうがいい?」
と心配になる方も多いでしょう。しかし、食糞にもさまざまな原因があります。
子犬では探索や遊びの一部として口にすることもありますし、排泄後の飼い主さんの反応がきっかけになっていることもあります。
例えば、
「うんちをする → 飼い主さんが大慌てで走ってくる → うんちを取り上げられる」
という経験を繰り返すと、犬からすると「飼い主さんが飛んでくるくらい、これは大事なものなのかな?」となってしまうこともあります。
もちろん、食事内容や消化吸収、寄生虫など、身体的な要因を確認することも必要です。
また、散歩中の拾い食いも、
「食べたら怒られる!」
と追いかけることで、犬にとっては「飼い主さんと追いかけっこが始まった!」という遊びになってしまうことがあります。
食べさせないことも重要ですが、「なぜ食べるのか」「どうすれば食べる前に別の行動に切り替えられるか」を考えることがポイントです。
⑤ 留守番が苦手・分離不安などの「不安に関する問題」
「仕事から帰ったら、部屋がめちゃくちゃ!」
「クッションがボロボロ!」
「留守番中ずっと鳴いているみたい……」
これも犬の飼い主さんからよく聞くお悩みです。ただし、留守番中に物を壊したからといって、必ずしも「いたずら」や「分離不安」とは限りません。
退屈で噛んでいる子もいれば、遊びの延長で物を壊している子もいます。一方で、飼い主さんがいなくなることで強い不安を感じ、パニックになっている場合もあります。
例えば私たちが、突然知らない場所に一人で置いていかれたらどうでしょう。
「いつ迎えに来てくれるんだろう?」
「ここは安全なのかな?」
と不安になってしまうかもしれません。
犬にとっての留守番も、場合によってはそれに近い状態になっていることがあります。
大切なのは、「壊したから叱る」ではなく、留守番中にその子がどんな気持ちで過ごしているのかを知ること。
必要であれば、留守番の時間や環境を見直し、安心して過ごせる練習を少しずつ行っていきます。
「困った行動」には、必ず理由がある
ここまで読んで、「うちの子、いくつも当てはまる……」と思った方もいるかもしれません。
でも、どうか「うちの子は問題犬・問題猫だ」と思わないでください。犬や猫にとって、行動は「言葉」のようなものです。
噛む、吠える、粗相する、食べる、壊す。その行動の裏には、
「怖いよ」
「困っているよ」
「こうしてほしいよ」
「これは嫌だよ」
というメッセージが隠れていることがあります。だからこそ、獣医行動診療科では、単純に「その行動をやめさせる」ことだけを目標にはしません。
「なぜ、その行動が起きているのか?」を考えます。
病気や痛みがないか、生活環境に問題はないか、どんな経験をしてきたのか、どんな場面で行動が起きるのか。
さまざまな角度から原因を考え、その子とご家族に合った方法を一緒に探していきます。
「こんなことで相談していいの?」と思ったら
「まだ軽く噛む程度だから……」
「もう少し様子を見よう」
「これくらい、しつけで何とかしなきゃ」
そう思ってしまう飼い主さんは少なくありません。でも、行動は繰り返すほど習慣になっていくことがあります。
例えば「インターホンが鳴る→吠える→家族が犬を抱き上げる」という経験を何度も繰り返せば、犬にとって「吠えると状況が変わる」という学習につながる可能性があります。だからこそ、
「最近ちょっと気になる」
くらいの段階で相談することも、とても大切です。
獣医行動診療科では、すでに問題になっている行動だけでなく、子犬・子猫の社会化や、病院・爪切り・歯磨きなどに慣れるための予防的な相談も行っています。
「これって行動診療に相談していいのかな?」そんな小さな疑問でも大丈夫です。
愛犬・愛猫の行動を「困ったこと」として叱る前に、「この子は、なぜこんな行動をしているんだろう?」と考えてみませんか?
その「なぜ?」を一緒に考えるのが、獣医行動診療科です。「困ってから」ではなく、「ちょっと気になる」段階から。
愛犬・愛猫の行動で気になることがあれば、ぜひ一度、獣医行動診療科にご相談ください。
当院(横浜市中区 本牧通り動物病院)では、年齢や性格、暮らしの環境、これまでの経過を丁寧にうかがい、その子に合った対応を一緒に考えます。診察では、普段の様子がわかる動画や、いつ・どこで・どのような行動が起こるかを記録したメモも参考になります。ご家族だけで抱え込まず、無理のない方法を一緒に探していきましょう。
気になる行動が小さなうちにご相談いただくことが、飼い主さんと愛犬・愛猫が安心して暮らすための第一歩です。どうぞお気軽にご相談ください。